では、前回同様に、私の指揮動作で演奏してください。あれあれ、すばらしい!ピッタリですね。しかも心地よい!実は皆さんがそれぞれ自分自身のテンポどりを無くしてくれたのでうまくいった訳なのです。
テンポが合わないと、みなさんそれぞれがテンポを「正確に」しようと懸命にテンポをとりますね。だれそれが「遅れる」かれそれが「走る」など指摘されると、なおいっそう無我夢中で各自「正確な」テンポをとろうとするのです。ところが、個人個人それぞれ「正確」だと思ってとっているテンポが常に他人と「同一テンポ」だったとしたら、マグレもいいいところ。それに気味が悪い!不可能です。だから当然合わない!
全員がそれぞれ「自分は正確に!」と思いこんでいるが、しかしその実体は、全体としてはバラバラな各々勝手なテンポで同時に演奏しようと、無理なことを強引にやっているにすぎないのです。正確と思うテンポならば、「リズムは合うはず」ということはないのです。
指揮動作を見て演奏することとは、先ほどのような「それぞれ」を無くすことができて、メンバーが同一テンポで演奏ができるというこなのです。指揮者が居ない場合は、個人個人が自分のテンポどりをやめて、全員で一つのテンポをとるように意思疎通することです。
テンポが揺れても、全員で同様に揺れれば、そしてそこに全員の意思があるならば素晴らしいことなのです。前回の1.が解決していれば、問題なく楽しくアンサンブルできるのです。だから、rit.やaccel.のようなテンポの変容や、楽譜の表記にはない味わいとしてのテンポの揺らぎといった「アゴーギク」が可能なのです。