今からもう二十数年前になる。かつて自身が関係していた学生ギターアンサンブルを、かれこれ10年間時折訪れては指導していた。あるとき「たまには見てやって」との関係者の進言で久しぶりに練習場を訪れた。そのときやっていたのがかつて私が編曲したことがある曲。さて今度はどんな編曲かなと聴いていたら、まさに聞き覚えのある私の編曲そのものだったのです。間違いなく10年ほど前に演奏会にも使用された曲。楽譜をそのサークルに私が遺したものだったのです。ところが、編曲者の名前が私ではなく、そのときの学生指揮者の名前になっているではありませんか!
古い資料として遺された曲の編曲者が、まさか自分たちの練習場に現れるとは思わなかったのでしょう。
ところで最近、歌手のM氏が作詞家K氏の作品を勝手に手を加え、それがもとで騒動になった。マスコミは「いつ解決するのか」「どのように決着するのか」などと言っていたが、愚かなこと。あの場合もう結論はでている。というより、解決がついているのですね。K氏はM氏との縁を切ったのです。これで解決しているのです。謝罪されたって、歌を元に戻されたとしたって、関係が元に戻ることなどないのです。
さて、先ほどの事件ですが、友人は「ひとこと言ったほうがいいよ」と私に言ってはくれましたが、私はその気にもなれませんでした。心の中はいろいろな意味の「悲しさ」でいっぱいだったのです。「もういやだ!」私の心は即座にある決着を見たのです。そう、その団体にはもう行かない。いや、行けない。被害に遭った人間がその場に行けなくなるがごとく、思い出深いその団体との縁を切ったのでした。それ以来私は、その団体を訪れてはいません。